header_info.jpg 高知県立のいち動物公園
icon_blog.png飼育日記一覧
ユーラシアカワウソの飼育日記

*はじめての出産〜29日齢


2018年3月10日にユーラシアカワウソ「へレス」♂×「アカネ」♀ペアの間に子どもが2頭生まれました。当園での繁殖は実に21年ぶりです(※)。子どもは残念ながら1頭亡くなってしまいましたが、もう1頭はすくすくと成長しています。繁殖に至った経緯や子どもの様子をこの場でお伝えしていきます!
※年数に誤りがあり、お詫び申し上げますとともに訂正させて頂きます。

さかのぼること2017年6月・・・
始まりは2017年6月3日。福島県のアクアマリンふくしまから「へレス」♂がやってきました。彼の出身はスペインで、クゥエートの施設からはるばる来日しました。
当園では「アカネ」「アザミ」姉妹を飼育していましたが、待望の♂がやってきましたので、ようやく繁殖に踏み出すことができました!
最初は突然の男子登場に、戸惑い、嫌がる姉妹。「あんた誰なのよ〜近づくんじゃないわよ〜」と大きな声で鳴き、警戒します。一方の「へレス」はそんなことに動じることもなく、かといってしつこくすることもなく、ほどよく距離をとります。あまりにガツガツしていないので、「そんな草食系男子で大丈夫なのか!」と少々心配が残りました。
 「へレス」と姉妹のどちらをペアにするか・・・これにはかなり悩みました。
 短時間の同居訓練を続けるうちに、徐々に「へレス」に対して心を開いていく姉妹達。「アカネ」「アザミ」のどちらとも相性がよく、展示場でも互いに追いかけて遊ぶようになりました。そして、ますます迷い、選べなくなる担当者・・・。
 そして、決め手は突如やってきました。「へレス」「アカネ」の同居中、水中交尾が確認されたのです。「へレス」と仲良くなりだした「アザミ」には非常に申し訳ない気持ちになりましたが・・・ごめんね、アザミ。
「へレス」「アカネ」ペアの誕生です!

19-1-01.jpg
ヘレス

19-1-02.jpg
アカネ

19-1-03.jpg
アカネ(左)にそっと近づくヘレス(右)


初めての出産
7月に交尾を確認しましたが、結局妊娠に至りませんでした。そして10月にマウントを確認しましたが、すぐに離れてしまい交尾に至っていないと考えていました。
しかしこの時交尾をしていたようで、12月24日に2頭のこどもを出産しました。交尾を確認していませんでしたが、もしもの場合に備えて出産の準備をしていたため、産室の巣箱に取り付けたカメラで子どもを確認できました。初産ではありましたが、「アカネ」はしっかり子どもの面倒をみていました。その様子をみて、本当に嬉しい気持ちになりました。しかし、初産では上手くいかないケースが多いと言われています。「アカネ」の場合も子育てはするものの、授乳が上手くいかず、残念ながら子どもは亡くなってしまいました。子どもがお乳を飲もうとすると、痛みがあるのか「アカネ」が体を動かしてしまったり、飲もうとしている子どもを抱えるなどして、子どもはお乳が十分に飲めず、衰弱して死亡したのではと推察しています。
 この出産で、授乳の問題さえクリアできれば「アカネ」が落ち着いて子育てを行えるということがわかりました。


次の繁殖へ!!
 産後まもなく再び「へレス」との同居を始めました。同居再開から4日目の1月6日に再び水中交尾を確認しました。「キタ〜!!」と次の繁殖への期待と前回の反省を胸に、今度こそ繁殖を成功させようと心に誓いました。
 前回の繁殖の反省点は、交尾未確認時における妊娠診断があげられます。妊娠時の体型の変化が分かりづらく、乳頭の変化は目視では分かりませんでした。そこで、体重測定を1週間ごとに継続的に行い、体重の変化と、腹部の変化から判断することにしました。これにより、絶対妊娠している!と確信に変わりました。
 また、前回と今回の繁殖で、普段見られない行動が見られました。寝室の中には遊具として枝を置いていますが、今まではほとんど見向きもしませんでした。しかしこの2回の繁殖においては、巣箱に運ぶようになったのです。この巣材を集める行動も妊娠を示すひとつの材料になりました。

19-1-04.jpg
水中交尾の様子

出産当日 2018年3月10日
 「まだか、まだか」と落ち着かない日々が過ぎていきました。想定していた出産予定日から3日過ぎた3月10日に、ついにその時がやってきました〜!
 当日の午前中はなんだか少し様子が違いました。床に腹這いになり、少しうつろな表情。呼びかけても少し顔をあげるだけで、再び腹這いの姿勢でじっとしており、辛そうに見えました。そして、一度巣箱に入ると出てこなくなりました。これは、明らかに様子が違う!ついに今晩か!!と期待が膨らみます。
 しかし予想していたよりもはるかに早く、夕方18時11分に1頭目、18時19分に2頭目を出産しました!


1日齢 2018年3月11日
 2頭のかわいい鳴き声と共に元気に動く子どもの姿がカメラで映し出されています。授乳も確認しましたが、やはり前回同様に「アカネ」は授乳時に痛みがあるのか、体を動かしたり、子どもを動かしたりしていました。


2日齢 あれ?・・・巣箱にいない!!!  2018年3月12日
 朝、モニターに映し出されていたのは空っぽの巣箱・・・。あれ?引っ越したの!?確認に行くと寝室の階段下から子どもの声が聞こえます。巣箱が落ち着かなかったのだろうか?・・・と心配しました。しかし野生では危機分散のために巣を頻繁にかえますし、またこれを裏付けるように他園でも場所を移動するという報告もあったので、そう解釈しました。ただ、階段下では子どもの姿が確認できないため、頼むからはやく巣箱に戻ってくれ〜と祈るばかりでした。


3日齢 2018年3月13日
 2頭のうち、1頭の子どもに動きがないことに気づき、急いで取り上げましたがすでに亡くなっていました。お乳をうまく飲めていなかったようです。カメラを通して授乳の様子は確認したものの、授乳量までは把握できませんでした。前回のことが頭をよぎり、もう1頭も無事に育つか心配になりました。
 「アカネ」はしばらく、いなくなった子どもを探していましたが、再びもう1頭の育児に専念してくれました。


4日齢 2018年3月14日
 この日も階段下にいて、はっきりと子どもの姿を確認できませんでした。なかなか鳴き声も聞こえず、衰弱しているのではないか・・・と不安ばかりがつのります。「アカネ」に育児を任せたいところですが、もし衰弱しているようなら、取り上げて人工哺育を考えなければなりません。
しかし、「アカネ」が階段下から出た時に、こどもの小さな体から発せられたとは思えないような大きな声で「ピィィィ〜」と母を呼びました。衰弱していれば、こんなに大きな声で鳴くことはできない、きっと大丈夫。このまま「アカネ」に任せることにしました。


5日齢 2018年3月15日
 念のため、子どもがしっかりお乳を飲めているのか確認するため、「アカネ」が隣の部屋に移動した隙に扉を閉めて、急いで子どもの腹部を確認しました。体の色は白っぽく、体長10〜15㎝程でした。子どもの下にある麻袋を引っ張り、直接子どもに触れないようにそっと体をひっくり返すと、お腹は丸く膨れていました。その瞬間、「ああ良かった〜涙」とほっとしました。子どもが静かにしているのは、衰弱しているのではなく、しっかりお乳を飲み、お腹いっぱいでスヤスヤと眠っていたようです。これで、心配性の担当者もようやく安心できました。
 その後、親子は巣箱に戻り、後日巣箱のカメラに映っていたのは、授乳の際、アカネが動いても、しっかりと乳頭をくわえて離さない子どもの姿でした。このたくましさのおかげで、今も生きてくれているのだなと、子どもの生命力に圧倒されました。がんばれ、おチビちゃん!!

19-1-05.jpg
こどものお腹を確認

12日齢 2018年3月22日
 寝る子は育つ。授乳も安定し、お乳をたくさん飲んで、スヤスヤとよく寝ています。「アカネ」も落ち着いているので、餌を食べている間に子どもを確認しました。体の色はまだ少し白っぽい色をしていました。
 その後新しい麻袋を巣箱の前に置いておくと、なんとアカネがこどもをくわえて巣箱から出てきました。担当者が扉越しにのぞいていると、最初は少しだけ気にする素振りを見せましたが、落ち着いており、親子の様子を間近で観察することができました。親子の姿に癒されます・・・。

19-1-06.jpg
体の色が少し白っぽい


可愛い鳴き声

番外編 アカネの息抜き
 ヒトもカワウソも子育ては想像以上に大変なもの。どんなに子どもが可愛くても、お母さんだって自分の時間が欲しいですし、少し息抜きしたいものです。ここで「アカネ」の息抜きをご紹介。寝室内のコンテナプールで泳ぐのが彼女の息抜きです。餌を食べ終わると、プールの中にしばらく入り、ゆったりとしています。気持ちよさそうです。続いて、麻袋で念入りにグルーミング。これを長い時は30分程行い、リフレッシュしてから子どもの元へ戻ります。上手く息抜きできているからこそ、こんなに落ち着いて子育てができるのかもしれませんね。アカネ母さん、頑張れ!!

19-1-07.jpg
プールで息抜き

24日齢 2018年4月3日
 子どもの横にものさしを置いてみました。頭からお尻まで約20㎝程です。手足の先は白いです。巣箱の中を自力で這う距離も伸びてきました。成長を感じます♪

19-1-09.jpg

29日齢 初めての体重測定 2018年4月8日
 「アカネ」が餌を食べている隙に、初めての体重測定を行いました。体重は643.2gでした。持った瞬間、「お、重たい!!」と思わずにはいられませんでした。それもそのはず、産まれて間もない頃は約70〜75g程・・・。体が大きくなり体重が増えていることは想像できましたが、まさかここまで重いとは思いませんでした。こんなに大きく成長して嬉しい限りです。歯をみると、下の犬歯が生えていました。また、左眼が少しだけ開いていましたが、完全に開眼していませんでした。体の色はお母さんそっくりです。そして、女の子であることが分かりました♪

19-1-10.jpg
体重測定

19-1-11.jpg
女の子♪

*はじめての出産〜29日齢

main_03.jpg
icon_blog.png飼育日記一覧